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自称ダンディ文豪(自称)
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SOFIA_ SSさまのお題です
暗い地下室の廊下に、彼のスリッパの音が響きわたる。 眠り続ける彼女に会うため、彼はこの病院の廊下を毎日通った。 彼のほかにこの廊下を通る人はほとんどいない。 10年もの間、まるで敬虔な巡礼者のように、彼はたった一人でこの廊下を通い続けた。 しかし神の愛に魅入られた哀れな巡礼者のような、彼の願いが聞き入れられることは無かった。 廊下の突き当たりにある病室、その冷たいドアに手をかける。 重々しい音を発して病室のドアが開いた。 蛍光灯の無機質な灯りにてらされた、彼女の横顔が目に入る。 「おはよう。」彼はその横顔に声をかける。 10年の間、毎日・・・ 「原因は不明です。」医者は困惑した表情で彼に伝えた。 「現代の医学では、彼女を眠りから目覚めさせることはできません。」 最初のうちは考えられるあらゆる治療を試してきた。 しかしどのような手立てを試みても、彼女は眠りから目覚めることは無かった。 10年の月日が流れた。 「新しい薬品が開発されたのですが・・・」ひと月前、彼女を担当する医師がおずおずと彼に言った。 「彼女のような症例は極めて珍しく、確実な効果を保障できません。ですが今回開発された薬は人間の脳に強く働きかけます。 彼女が目覚めたいと思っているのなら、目覚めることは可能です。しかし・・・」 「しかし、何ですか?」彼は医師に尋ねた。 「彼女が目覚めたいと思っていない場合これまで以上に深い眠りに陥ります。最悪の場合・・・」 「どうなるのですか?」 「・・・二度と目覚めない恐れもあります。」 医師はしばしの逡巡の後、そう言った。 彼女が目覚めたくない?そんな事ありえない、と彼は思っていた。 少なくとも彼女が眠りにつく前に、ふたりは何も問題は抱えていないように彼には思えた。 確かにまったく問題はないとは言い切れない。だがそれは世間一般の場合と同じだろう。 彼女の眠りは何らかの病気が原因であると信じていた。 目覚めたくないなんてことがあるはずがない。そう信じていた。 そして新しい薬品を彼女に使用することにした。 それがひと月前のことだった。 眠り続ける彼女の横顔を見つめながら、彼は先ほど診察室で聞いた医師の言葉を思い起こしていた。 「大変残念なのですが・・・」医師は彼の目を見ずにそう言った。 「症状の改善は見られませんでした。睡眠のレベルは更に深くなっていますので・・・」医師は一息おいてから言葉を続けた。 「今後、彼女が目覚めることは二度とないでしょう。」 彼も医師を見ていなかった。 かといって何を見ているわけでもなかった。 あの時、僕は何を言ったらよかったのだろう。そう彼は思った。 幾度と無く繰り返された希望と失意の宣告 その繰り返しに言葉を失っていた。 ただ彼女が二度と目覚めることがないという事実だけが、そこに残った。 そうだ、彼女はどうして欲しかったのだろう・・・ その時初めて、彼女の意見を聞いてみたいと心から思えた。 でも二度と彼女の意見を聞くことは出来ない。 綺麗だ・・・ 二度と目覚めることのない彼女の横顔を、心から綺麗だと彼は思った。 10年間眠り続けたせいだろうか これからも目覚めることがないからであろうか 彼女の横顔をこれまでに感じたことのないほど美しいと思った。 彼はベッドの横にひざまずき、彼女の掌にそっと自分の手を重ねる。 彼女の掌は細くやせていたけれど、思ったよりも暖かい。 それは彼女の生命の温もりそのもののように思えた。 僕は、と彼は思った。 薬など使うべきでは無かったのかもしれない。 彼女は何か他のもので目覚めさせるべきだったのだ。 眠り姫が王子のキスで目覚めたように・・・ でもすべては遅すぎた。 彼は彼女の掌にほほを乗せてみた。 そして二度と目覚めることのない彼女の体温を感じてみようと思った。 その時、 地下室の病室にいる彼の耳に、かすかな鐘の音が聞こえたような気がした。 そうか、今日はクリスマスの夜だったのだな・・・ ふと、涙が彼のほほをつたった。 涙ってこんなに熱いものだったのだな、と彼は驚いていた。 そして彼は 涙の雫が落ちた 彼女の掌の かすかな動きを 感じていた。
by e_vans
| 2004-12-01 23:50
| 江場中祭
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